キリの倉庫。

暇だけど暇じゃない。でも暇人、な奴の倉庫。

Okay, that's it! I can't beat you!

本日快晴。

お日様今日もごくろうさまです。

クーラーの効いたこの部屋では関係ないけど。

高層ビルの最上階。

そこで僕は今日も書類を眺めながら、とびきり甘いコーヒーをすする。

ふと、ひとつの書類が目につく。

【任務完了】

やたらとかわいらしい字で書かれた、空白の目立つ報告書。

・・・文字だけなら、だれも彼女があんな性格だなんて思わないだろう。

ぺらり、とそれをめくると仕事内容が書かれた紙が現れる。

・・・彼女にこの仕事を突き付けたのは二日前。ぶーぶーと文句をいう彼女にこの仕事が終わったら給料を倍にしてもいいと言ったら、喜んで会社を出て行ったのを覚えている。

彼女はなんだかんだでがめつい性格の持ち主だ。字はかわいいのに。

・・・というか、普通なら一週間はかかるだろう、これ。

仕事の内容はそこそこ大きい盗賊団の討伐。

そんな仕事を女の身ながら二日で成し遂げてしまうのが、

 

「おらあああぁ!!あ、シイラ。久しぶりだな!」

ばーん。

 

鉄製の扉を蹴破ってきた彼女…こと、アリア・レべシェアトだったりする

 

 

*****

 

 

「・・・なんですか、アリア社員。私はいま書類をまとめているところなので、早々に退室していただきたいのですが。」

にっこり。お得意の営業スマイルを浮かべる。

言葉に棘があるのは扉の修繕費を気にしているとかではない。決してない。

「いまさら社長ぶってんじゃねーよ、シイラ。いつもの僕っ子スタイルはどうしたんだよ。」

蹴破ってゆがんだ扉はそのままに、彼女はずかずかと社長室にはいり、応接用のソファにどかっと座る。

ああぁしわになる・・・。

こほん、と咳払いをして僕、ことシイラ・ドリューは彼女に問う。

「で、今日はなんの用ですか。給料の件は部下に任せているので、報告書を提出したならもう支払われているはずですが。」

「ああうん。今手元にある。」

彼女が羽織っているマントをばさばさと上下に振ると、ぼとっ、とそれなりに万札が入っているであろう茶封筒が床に落ちる。

ちょっと待て、そのマントポケットないだろう。

僕のそんな心の声は、ひょいと封筒をひろった彼女の次の言葉で掻き消えた。

 

「私しばらく旅に出るから。」

 

・・・うん?

何を言っているのだろう、この女は。

彼女の持ち物をみるかぎり、とても旅にでるとは思えない。

そりゃそうだ。分厚い封筒オンリーなのだから。

 

「・・・あの、旅に出るなら食料とか」

「その場で買う。」

「着替えとか」

「かさばるからその場で買う。」

「・・・武器は?」

「あ、それは忘れてた。あとで取りに行く。」

「・・・・・・。」

はあぁ・・・、とため息をつく。

つくづくこの人は常識知らずだ。彼女の過去を知っている僕は、それもまぁ仕方がないとも思えるが、それでも一般常識くらいは兼ね備えていてほしい。

「かばんとか、持ち物をいれるものくらいは」

「いらねぇ。」

ずばりと僕の助言は切り捨てられてしまった。

「大丈夫だって。いままで武器だけで生き延びてきたわけだし?」

いやそれとはまた話が違うだろう。

はぁ、と短く本日二度目のため息ため息を吐いてから、説教をしたほうがいいかな、いやでも意味ないだろうな。と考え直して、

「・・・わかりました。あなたに何を言っても無駄なのは承知していますので、反対はしません。ただ、心配なので何かあったらこのトランシーバーで連絡ください。」

机のうえにあった小型の機械を彼女に渡す。これは最近我が社で開発された、どんなに遠かろうが火の中だろうが水の中だろうが壊れない優れものだ。

データを取るのにもちょうどいいから、持たせておこう。

「お前過保護だよな。私のほうが年上だっつうのに。お母さんかてめぇ。」

悪態をつきながら彼女はトランシーバーをマントでくるむ。次に彼女が手を離すと、そこにはなにもなかった。

どうなってるんだそれ。

そう思ったら彼女が部屋を出て行こうとしたので、僕は

「ちゃんと武器は持っていくんですよ。」

と言った。

「おぅ。じゃあまたな。」

彼女は少年のように白い歯を見せて笑うと、ゆがんだ扉の横から去って行った。

 

あぁ、僕もあの人には甘いなぁ。

 

軽く微笑みを浮かべながらため息をつくと、とりあえず僕は電話をとって部下に扉の修理の手配を頼んでおくのだった。

 

 

 

 

Okay, that's it! I can't beat you!(まいった、君にはかなわないよ!)

 

 

 

 

 

***あとがき***

主人公の名前でましたー!アリアさんですね。はい。

うごメモでは「アリア」だけで、「アリア・レべシェアト」とはあまり言ってなかったと思います。

あ、ちなみに今回シイラ君というのが出てきましたが、彼はしばらくでてきません。

乙!(笑)

 

次ではアリア目線でお届けしたいと思っています。

もしかしたらこれまたうごで(ryにはおなじみかもしれないあいつ目線かもしれません。

暇なときに更新します^^

それでは、次回もよろしくおねがいします。